本記事は、Hulotteより2020年3月に発売された『不可視の薬と数奇な運命』の感想記事です。 いつも通り、ネタバレが最小限の記事ですので、購入検討の参考になれば幸いです。

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まずは体験版の感想はこちら。

元々購入予定はなかったのですが、七夕莉ボイスに負けました。
とはいえ品質的に問題ないと考えて、購入しました。


それでは製品版の感想といきましょう。

ルート構造は、共通ルートからフラグを重ねて個別ルートに分岐するスタンダードものでした。
最終ルートのチトセのみがルートロックがかかっています。
私は、琥珀→羽→夕莉→亜芽→チトセの順番でした。
Cuffs系列なので、ルートガイドありなので選択肢で苦労することはないでしょう。

シナリオは、最終的によくできているという感想になりました。
チトセのみがルートロックになっていることには1周目の共通ルートで気づきました。
最初のルートが終わった時点では、少しもやもやが残る感じでした。しかし、3ルート終わった時点で、チトセ以外の残りの4ルートがちゃんと並列関係にあることがわかり、合点がいきました。
このような最終ルートが存在するタイプで、タイムリープなどのギミックを使用せずに、残りのルートを有意義にすることができていることには、感嘆することしかできませんでした。ホントお見事です。

並列関係にしつつ、どのルートからやっても大丈夫なように構築してあることも、個人的に評価したポイントです。なので今回、攻略推奨順などの記載はしていません。
大切なことなのでもう一度言います。どのルートからやっても大丈夫です。
好きなヒロインから攻略しましょう。

そういえばメインヒロイン5人全員にニーオナがあるのは、誰の性癖でしょうか?(歓喜)

原画は池上茜さん。塗りが加わることで、ヒロインの魅力を何倍にも引き立てているように感じました。個人的には琥珀の鼠径部と亜芽のおっぱいが好みでした(なおヒロインとして一番好みになったのはチトセでした)。

CVは全員良かったと言いたくなりますね。
せっかくだから少し個人的な見解とともに感想を語ります。

声優さんの特徴の分類の一つとして、バランス型と特化型に分けられると考えています。
例えば七夕莉のCVである那須なゆりさんとか特化型の好例ですね。
独特なボイスゆえに合うキャラクターが限られます。ですが、ハマったときの破壊力はすさまじいものとなります。
一方、バランス型の好例は亜芽のCVである白雪碧さんですね。
色んな声ができて、色んな役がハマります。この声誰だろう?と調べると、この人だったんだ、と驚きが得られます。白雪碧さんの場合は、あいミスのファムなどで驚きましたね。
もちろん両極端ではなく、バランス型寄り、特化型寄りという感じで濃淡で表現されるものだと考えています。

本作ではそういった色んな濃淡が含まれつつも、サブヒロイン含めてちゃんと演技できているのが素晴らしいと思いました。本作での個人的な発見としては、七坂真理さんがバランス型に近いのかな?(←まだ完全に把握できてない)と感じました。Cuffs系列以外の作品も出てくれると良いなぁ、と思います。そういう点では塩小路もろみさんにも期待ですね。

こういったCVの強さは、CVキャスティングおよび音声編集の力もあってのことは踏まえた上で、これからも見ていきたいですね。

システムに関しては、同日発売の『神様のような君へ』の感想記事に記載したのでそちらを参照で。






今回はCVについて少し熱く語りましたが、安定のクオリティの高さを魅せてくれた作品だと思います。一言で言うなら、「高品質な作品のお手本の一つ」と言ったところでしょうか。
Hulotte作品は今回初めてでしたが、過去作もこれからの作品も見ていこうと思いました。

本記事は2020年3月発売の『神様のような君へ』の感想記事です。
ネタバレありの記事ですが、ほとんどネタバレなしのいつものパターンです。
未プレイの方は購入の参考にしていただければ幸いです。

神様のような君へ


本作の体験版プレイ時の感想はこれです。




さっさと製品版の感想を述べるとしましょう。

ルート構成は、共通ルートから大きく3ルート(厳密には3×2ルート)に分岐する方式。
便宜上、ハッカールート、Vルート、探偵ルートと呼称します。
サブヒロインが一人ずつこの3ルートに対応しているため、3×2ルートというわけです。
※なお、ツクヨミルートだけ共通ルートからの入り口が二つあります。

本作はルートガイドがデフォルトではONになっているため、選択肢で迷うことはないと思います。
どの選択肢で分岐するかを含めて楽しみたい人は初めにOFFにするのが良いでしょう。

まずはシナリオについて。
EDクレジットを見るとシナリオ補助の方もいますが、主に書いたのは3人で、それぞれが各ルートを担当しているようなので、まずはルートごとに述べます。

①ハッカールート
3つのルートの中で多分、一般評価が低めになるんじゃないか、と思えるルート。
でも、それは不可抗力であり、だから良くないというわけではありません。
むしろテキストはしっかりしており、キャラの制約がある中で綺麗な物語を描けていると思います。

②Vルート
一番強いギミックを使っているので、多分このルートが一般評価が高くなると思います。
キャラクターの魅力の強さゆえにそういうことが起こると予想しますが......。
このルートのものすごく勿体ない点は、不自然なアラビア数字が存在すること。
詳しくは3月28日の私のツイートをtwilogから見ると分かります。
特に「一流」が「1流」になるのは、通常のATOKの変換では出ませんし、慣用句は横書きでも漢数字を使うべきだと思います。
話の構成もよく、VTuberへの理解の深さを上手くシナリオに落とし込んでいる、と感じました。

③探偵ルート
3つのルートの中で一番評価が割れるルートだと思います。
ラナルートの途中でソフィアルートへの分岐があるため、ラナルートの一部+ソフィアルートが、「ソフィアルート」として認識される可能性があります。その場合、ラナがメインヒロインなのに、ラナの方が短いと思えてしまうかもしれません。
また、バッドエンドの内容が人によっては嫌うかもしれません。まあそういう好き嫌いがあるユーザーの方は「イエス、ロリータ!ノー、中だし!」の精神で行きましょう(笑)
でも①のときと同様に、テキストが悪いわけでもないですし、これらを非難するのは野暮なことだと私は思います。

①~③までそれぞれ味の違いが出ていて、良い作品に仕上がっていると思います。
一方で、ルート同士の均一化を求める人には合わない作品になっているかもしれません。
例えば、エッチシーンのシーン数の差。ストーリーラインに合わせて入っているため、シーン数がルートごとに微妙に異なります。
あと、エッチシーンといえば、サブヒロインを合わせた「3P」があるのはなかなか印象的でしたね。未経験の方も、本作で3Pの味を覚えてみてはどうでしょうか?(ゲス顔)

全体として統一されていた点は、一つ一つのお話を比較的短めに区切っている感じですね。
オートモードをよく使う人間としては、ちょうど良いお話の長さになっていたと思います。
ただどんどんクリックして話を進める人にとっては、短いと感じるかもしれません。
なので、オートモードをメインとして途中クリックしつつ読み進めるくらいが、ちょうど良いと思います。(多分そういうプレイングを想定して作られているのではないか、と感じました)

③で少し触れましたが、バッドエンド(途中で終わる分岐)が存在します。その場合EDムービーがありません。バッドエンドがきっちり存在しないゲームも多い中で、なかなか挑戦的だなと思いました(良い意味で)。


原画はカントクさんですね。私個人としてはポリフォニカの印象が強いですね。エロゲでは今回初めてでした。パッケ絵的にエッチではないけど、実際エッチシーンになるとエッチな感じがしっかりでていると感じました。見るからにエッチなのも良いですけど、脱ぐとエッチなタイプも良いですよね。

背景はわいっしゅさん。Purpleの『アオイトリ』のときも思いましたけど、ほんと綺麗な背景を描かれますよね。まあ一つ述べるなら、お洒落なカラオケボックスだなぁ、と思う一方で、少し小汚い感じの背景を描くとどうなるんだろうな?と思いました(そういう作品が来ると良いなぁ)。

CVは全員強かったですね。キャラへのハマり方がばっちり過ぎて怖いくらいです。
久々に、九条信乃さんのボイスを聞いた気がしますし、ああいう演技を聞くのは初めて?かなと思える演技でしたね。

演出は、ALcotのかつらぎさんとCubeの双葉さん。
安定ですね。お手本のような演出をされていたと思います。

システムで特徴的だったのは、スクショ機能ですね。
ショートカットキー「S」で一発で撮れるのはすごく便利だと思います。
私から言える提言は、広報の方が担当者にお伝えしてくれると思ってますが、別ルートからこれを見る可能性も考慮してここにも貼っておきます。


他にも音楽のPeak A soulさんや音声編集の方々......、
一人一人言及するとキリがないのでこの辺にしておきます。



まとめます。
本作は、実力のあるクリエイターさんたちが集まり、それぞれがそれぞれの味を出し切った作品だと言えると思います。それゆえにとがった部分があり、それが良いスパイスになっていると思います。
同じような味よりも少し違う刺激を求めて手を出したいちょうど良い作品になっているのではないでしょうか?
Cuffs系列は安定よりもきっちり挑戦の味を出してくれるので、毎回楽しませてもらってます。次回作も心から期待しております。

本記事は、Soire(ソワレ)から2020年1月に発売された作品『サルテ』の感想記事です。
ネタバレ要素が一部含まれますが、重要要素は伏せる形で提示しているため、購入検討者が一考するための内容となっています。
コメント 2020-01-31 222717



まずはサルテの体験版の感想から述べていきます。



正直、ここまで体験版の感想を端的に書くことは過去なかったと思います。
しかしながら、それでは物足りないものだと思うため、詳細について触れていきましょう。

本作は、まずチャップリンの言葉の引用から始まります。
"Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot."
「人生は主観的に見ると悲劇だが、客観的に見れば喜劇である。」

いきなり引用で始まるということは、その言葉を「主題」として扱うと読者に明示することなります。

ここから語られるのは悲劇ばかりです。
サルテ自身に降りかかるIron Meidenの悲劇、ゲーム内で始めに演じている劇。

後者から少し引用しましょう。
「あぁ、やっぱり私は稚拙な道化」
「折角の舞台も、夢を見ることなく幕が降りてしまう」
「――私はなんて間抜けな、悲劇の主役(ヒロイン)だったんだろう」
ただ、彼女が主演を演ずる劇の演目は『嘘』と語られます。

劇を見る人間からは、悲劇は「嘘」だと既に明示されているわけです。
つまり、最初の引用の通りだと、こういった悲劇は「嘘」であり、真は喜劇だとメタ的に作者は語るわけです。

引用行為というのは非常に重い行為であり、それをしたからには書き手自身の言葉で語らなければなりません。だからこそ、プロローグの最初から「悲劇」を「嘘」だと改めて語りに行ったのでしょう。

プロローグの最後では、登場人物4人全員が復讐的描写の元に「殺す」ことを宣言しています。
ただし、誰が誰に殺意を持っているのか?をわざと隠した状態でプロローグが終わりを迎えるわけです。

プロローグは断片的描写を沢山ちりばめる形式でした。時系列を曖昧にした状態で断片的描写を続ける形をとり続けました。それも「誰が話しているのか」をテキスト的に語られない状態で(もちろんボイスで判別はつきますが)。
しかしながら、最後に登場人物それぞれが誰かに対して何らかの理由で殺意を持っていることを明示することで、読者の視点をきっちり誘導していること、つまり誰が誰に殺意を持っているのかを読者に考えさせることで、作品への吸引力を持たせているのが、非常に綺麗な点だと思います。この点がプロローグの構成として、個人的に評価の高い点です。

本編は、サルテとクルーン(案内役)という二人の登場人物から始まります。
クルーンによりサルテの死が明らかにされます。ただしサルテには死の理由の記憶がないため、サルテは追体験にてその理由を探すことになります。
体験版で追体験の1周目が語られますが、1周目は悲劇にてサルテの人生は幕を閉じます。
しかし、クルーンによりその事象は否定され、2周目に突入するところで体験版はおわりでした。

実際、この体験版で語られたものも引用の通りです。
この物語は悲劇ではない、読者(クルーン)が観測すべきは「喜劇」であるべきだと。

つまり、この物語は最初の引用に従い続けているわけです。
引用の重みを理解して、物語を率直に紡いでいるわけです。
この丁寧さと、先に述べたプロローグの吸引力を私は非常に高く評価したため、端的に構成がしっかりしているとツイートで述べました。








それでは製品版の話に移ります。

シナリオ構造は一本道で枝葉分岐型の方式。
枝葉は基本的にBADENDで、ConfigにてBAD選択肢を選択肢時点で明示するかを設定できます。

一幕あたりのシナリオの流れは、

囚われのサルテ→陵辱シーン→選択肢→結果→クルーンとの会話

で出来ています。

物語が徐々に進みつつ、伏線が張られ、最終幕から回収される流れは非常に綺麗なものでした。

最終的に、チャップリンの喜劇の引用になぞらえた点は、作品の骨子の太さを象徴しており、伏線回収としての説得力を引き出している良いものでした。

サルテにとっての自分自身の人生を「喜劇」とする最大の表現方法が、あの結末とするなら納得です。クルーンの正体がサルテでなくては納得いかないところが複数見られたので、クルーンが仮面の中に素顔があることを明示するシーンで、クルーンの正体に確信を抱きました。しかし締めの説得力の強さがあり、気づけてもなお「この作品は良い」と思わせるものでありました。

主演CVは、メイメイこと御苑生メイさんですね。実に素晴らしきサルテを演じられたと思います。陵辱シーンも魅せるシーンも幅広く演じられる、素晴らしい内容でありました。他のCVの方々も勿論、作品世界観に沿った良いCVだったと思います。

絵に関しても、原画と塗りがマッチしており、陵辱されながらもそのヒロインの美しさを失わせないところが良かったです。

演出や効果音も適切に使われており、システムも安心のワムソフトでした。
細かいところは実例を挙げないとキツいので割愛します。



以上の通り、特に非の打ち所がない感じの内容でした。
ですので、体験版に触れてみて、気に入れば製品版をプレイしてみてはいかがでしょうか。

最後になりますが、本記事を読むことが、(エロゲーマーとして)悲劇ではなく喜劇への一歩であることを私は願っております。

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