Missing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~(ミッシングクロスリンク~てんのゆりかご、とぎのはな~)の感想をいつものように乱雑に書きます。タイトルの略称はミシクロです。
もちろん、ネタバレを含むので、それを嫌う人は回れ右でお願いします。

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ミシクロに対して最初に抱いたイメージは、ヒロインの幅を随分と広く設定してきたな、という少しマイナスイメージでした。
献身的なオートマタ、毒舌天才、ゴリラ、病弱。
ヒロインの属性の時点で風呂敷広げすぎだろ、としか思いませんでした。
そして、QPとかいうリンゴの精霊の生まれ変わり。
なぜコイツが出てくるんだこんにゃろ。

なにはともあれ体験版。
そこで全て判断するつもりでした。

……
……




べた褒めしました。人工知能(AI)ネタに弱いんですね、私。
もちろんAIネタの下手なやつはすぐに気づくんで、速攻で切るんですけどね。
明らかに「分かっている」作品だと体験版で判断したので、買うことにしました。


さて、ここから製品版のお話。

この作品に使われているギミックは大別して2つ。

一つはチェス。
チェスの棋譜(試合の再現)を活用しているところがいくつかあります。
私自身、類似のボードゲームでちょっと実力がある人ですが、チェスはからっきしです。
とはいえ、ルールが分からなくてもギミックとして機能するように創意工夫が見られて、(ルールが分からなくても)面白かったです。

もう一つは、人工知能(Artificial Intelligence:AI)。
チェスや将棋、囲碁をやっている人間の一部は、AIについて一般人よりも詳しいです。私もその一人ですね。だからこそ、体験版であの食いつき方をしてしまいました。

専門用語がまあまあ使われますが、シナリオの中に綺麗に組み込まれています。
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チュアブルソフトの『あの晴れわたる空より高く』
をやったことある方は、あのときの専門用語の処理方法を思い出してください。あの良さがここで生かされていました。


実は、「大偽典図書館」の元ネタを予想したものがあったのですが、どうやら違ったみたいです。
そっち系のお話は別記事で書きたいと思います。



シナリオルート形式は、ユースティア方式(脱落式)。
晶→ひな→遊離→姫風露→グランド
この順番で分岐の度にヒロインの個別を処理していくことをオススメします。
私は遊離と姫風露を逆にしましたが。
あと、あえて飛ばしましたが、ある種のBADENDも用意されているのも良かったです。


ちなみに、キャラ的に一番クリーンヒットしたのは、遊離ですね。
私にとって「共感性の高い」ヒロイン、第1位になりました。

遊離の行動一つ一つに対して、その行動をやりたくなる気持ちがよく分かるんですね。
主人公への意地悪、天才的なところのやるせなさなどなど.......。
共通ルートから個別ルートの端から端まで、感情の動き含めて「わかる」ってなるんですよね。

もう語彙力が欠けるくらいのレベルで、共感できてヤバいとしか言いようがなかったです。
「キミにこれから私のせいでいっぱい傷ついて、苦しんで――だけど最後にはキミに、キミを嫌いな私のことが、世界で一番大好きだって言わせてあげる。」
この台詞は反則ですね。


CG・立ち絵の塗り方も良かったですね。
儚さを感じさせる塗り方が、より一層この作品らしさを出していました。

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こういう正気を失った目を立ち絵で出しつつ、全体として違和感を感じさせないところが、作品全体をよく見たディレクションだと感じました。

演出も、Yow氏や椎原旬氏がサブディレクションで関わっているだけあって、細かいところまで行き届いていました。

BGMも適材適所で上手く適応しており、作品の統一感を際立たせていました。

そしてUI(ユーザーインターフェース)。これが素晴らしい。ディレクターさんがTwitterで力を入れたとおっしゃっていましたが、批判承知でよくやってくれた!と言いたくなるレベルでした。

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これが通常のゲーム画面。

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マウスカーソルを外側に持ってくると、このように最低限の機能が表示され、右下のメニューを開くと......。

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このように展開されて、必要なものにさっと触れられるんですね(左下はSAVE)。
個人的にはQ-saveは必要だけど、Q-loadは不要だと思っていて、その辺を加味したシステムだったと思います。

一つだけUI関連の弱点を言うなら、セーブデータにあるキャラクター系のタグの法則性が掴めないところですね。個別ルート前でどういう要素を見てついているのかが分かりづらいところだけが弱いところでした。なお、各話のタグは振り返りの際に分かりやすくて重宝しました。
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もう一つだけ、私から見た弱点として挙げるなら、
主人公の台詞に不要なネタ仕込みが入っている点ですね。
パロネタそのものは悪いものだとは思いません。
しかし、基本ラインが真面目なテイストの作品だけあって、タイミングを誤っているところがいくつかありました。結構気づきづらい出し方しているので、気づかない人はそのままスルーでしょうけど。



総合評価としては、AIやSFがダメじゃない人、難しい単語が苦手じゃない人には無条件で勧められると思います。特にはれたかが好きな人は今すぐDMMのサイトに行ってポチッと買いましょう。そのくらい良い作品でしたし、またこのような作品を期待したいです。


最後に一言。このゲーム、絶対に普通よりお金かかってるよ。大資本DMM恐ろしや。