本記事では、スマホゲーム『マギアレコード』にて行われたイベント「百江なぎさは願いを叶えた」の考察をしていきます。





ガチのネタバレを含みますので、その点を承知の上でお読みください。







ストーリーのポイントだと思われる部分を取り上げてみる(要約も含む)。

【序章】
ここで『叛逆の物語』を踏まえずとも読める物語であることが提示されている。
なので、本稿でもそれについては触れない方針とする。
実際、イヌカレー氏もこのように述べている。


【1話】
なぎさが非常に自分を律している子であることが示される。この特性はこの後のエピソードにおけるなぎさとQBの会話にもよく反映されている。

【2話】
???「なぎさは不幸なお話を読むのが好きでした。不幸なお話を読んでいる間だけほんの少し心が軽くなったような気がするのです」
???「(前略)どんなひどいことが起こったって、最後になれば”おしまい”ひとつで物語は終わるのです」
???「なぎさにはそれだけでどこか救われたような気持ちになるのでした」

個別の感情を持たぬゆえに願いを持たないQB(キュゥべえ)に対して、
なぎさ「感情があれば自分のお願いも分かるのですか?」

なぎさは願いが分からない人間。お話の中で願いを叶えた者はみんな不幸になった。
なぎさは不幸になりたくない。

なぎさは問う。なぎさと同様の境遇の魔法少女は何を願ったのか?
QB「特定の人物からの関心、好意を得たい。愛が欲しい」


【4話】
なぎさ「誰もなぎさのことは助けてくれないのに、なぎさは誰かを助けなきゃ行けないのですか?」
QBの答えに対し
なぎさ「でもなぎさの気が向かなかったら」
なぎさ「なぎさが助けなかったら、なぎさが助けなかった"から”誰かが死んだことになるのです」
なぎさ「なぎさは人殺しになりたくないのです」
なぎさ「なぎさはきっと助けようと思っても失敗してしまうのです」

【6話】
なぎさは多様なチーズを選び購入する。母親が好きなチーズを選べるように。
そして、なぎさは残ったチーズで十分だと主張する。
なぎさの家族関係がここで明かされる。父親は母親となぎさを捨てた。ただなぎさは父親を恨んでいない。母親が居るからなんとも思わない。

【7話】
魔女の結界にてユゥ(夢遊の亡霊)という名前の魔法少女に救われる。
彼女は魔法少女になる前の記憶がなく、悪い人を殺している魔法少女。
人格を忘れ、歳を取ることも死ぬことも忘れ、現実と夢の境目が分からなくなった魔法少女。
ユゥ「(前略)自分でやろうと思ったことに正直になることにしたんだ!」
ユゥ「なぎさちゃんも、もし魔法少女になったら」
ユゥ「我慢するのとか、やめちゃっていいと思うよ?」

【8話】
なぎさ「なんでもひとつだけ叶う願い。きっとはじめからなぎさの願いはひとつしかなかったのです。けれど今の今までなぎさはそれを望んでいませんでした。望まぬ理由を考えようともしていませんでした。でも、なぎさは魔法少女になって自由になれるのです。きっと自由になったなぎさは何を考えても良いのです」
(中略)
なぎさ「自由ななぎさは今のなぎさを今の全てを自由に嫌いだと言ってしまえるのです。そう思った途端、自分の願いの輪郭、とてもよくないその輪郭がなぎさの頭の中に浮かび上がりました。自由ななぎさはとてもよくないことだって考えます。だってなぎさは自由だからです」
(中略)
なぎさ「もしかしたら、なぎさはもうお母さんから愛されていないかもしれない。きっともう、愛されてはいない。愛されていないのなら、もしお母さんの病気が治せたってなぎさは必要とはされない。けれども、です。もしお願いで、お母さんの病気が治せたら初めてお母さんの役に立てるのです。恩を着せて、思い知らせて、見直してもらって、後悔させて、そうすればなぎさはきっとまた愛してもらえる。元の幸せななぎさに戻れる

【9話】
なぎさは魔法少女になるを決心した。
絵本「魔法少女になって、なぎさは自由になるのです。正しくもない、よい子でもない、魔法少女のなぎさに、なぎさはなろうと思いました。」

なぎさの願いは、「お母さんの病気を治すこと」。

ただ、その内心は非常に歪んだ思いに満ちていた。
なぎさ「なぎさは、お母さんに感謝されたい。なぎさのおかげで病気が治ったってちゃんと知らせたい。お母さんはきっとなぎさを愛していなかったことを申し訳なく思うに違いない。なぎさを愛さなかったことが間違いだったと思い知るに違いない。わたしは伝えたい。わたしはわたしの良くない心を満たすためにお母さんを治したい

【10話】
なぎさは「願い」の同意を得るために、病室の母親に会いに行った。
しかし、なぎさの母親は被害妄想に満ちていて、なぎさのことさえも拒絶した。
なぎさは昔みたいな母親に戻って欲しいと願っていたが、それを口にはできなかった。
そんなことを言えば、まるでお母さんがおかしく、間違っているみたいに聞こえてしまうから。
そんなやりとりの中で母親はこう言った。
なぎさの母「あなた、なんでもできるの?なんだってしてくれるの?それなら私の代わりにみんな殺して。みんなみんな殺してよ。(中略)病気なんてどうだっていい!」

絵本「まるで紅茶の中に居るような病室では埃だけがゆったりと泳いでいました。今日はとても天気がよいので、息が詰まりそうな夕焼けです。あたりなんかはどこもオレンジ色で、このままどこの境目も分からなくなって、女の子は泡になって溶けてしまいました。地面にはちいさな染みだけが残りました。おしまい(後略)」

そして、QBになぎさは願った。
なぎさ「キュゥべえ、なぎさのお願いが決まったのです。なぎさのお願いはチーズケーキ。この世でいちばんおいしいチーズケーキが欲しいのです」
お母さんがそう感じるチーズケーキを望みました。

【12話】
魔女の結界が病院を覆った。逃げるように迫るQBに対し、
なぎさ「(前略)なぎさは恩を着せるためなら、後悔させられるなら、なんだってやるのです!魔女にお母さんを殺させたりしないのです!」

【13話】
魔女はユゥによって退治された。
ユゥの悪い人ターゲットの一人だったなぎさの母親はユゥに殺された。
その死ぬ間際になぎさは立ち会った。母親はなぎさを求めたが、それに対し無言をひたすら貫いた。

絵本「百江なぎさはひとりぼっちで魔法少女になりました。それから程なく、誰にも知られずにその一生を終えました」
なぎさの最後に見た景色。たくさんのお菓子に囲まれた世界。そこで母親の大好きな、そしてなぎさの大好きなチーズを求めて、彼女は終わりを迎えた。




以上を踏まえて、「なぎさの叶えた願い」とは何なのか?を(その変化も含めて)考察していく。

2話時点のなぎさは、基本的に「願い」を持たない子。
それは「求めること」が「悪」とする物語からの教訓ゆえのものであり、倫理観によるものとも言えるだろう。

そんななぎさが進むにつれて、「願い」とはなんなのか?と考え、様々な出来事に遭遇する。
一番の転機となったのが、ユゥとの出会いだろう。
そこで知るのが、悪の許容。だけど、なぎさにとっては「悪」であることは「いけないこと」。
だから、一度自分が「いけない子」になり「いけない子でなくなること」が願いになった。
それが反映されているのが8話のなぎさの言い回しだろう。

その「いけない子」としての殻が、なぎさにとっての「魔法少女」
だから、お母さんを治すことで、「いけない気持ち」を取り除いて欲しいと思って、最初QBにお母さんを治すことを考えたのだろう。

それを確実に求めるためになぎさは、病室で母親と会話した。
しかし、母親との会話で、母親を治すことでは「いけない気持ち」を取り除くことができないことが分かってしまった。
そこでなぎさは願いを変えた。母親が一番おいしいと思うチーズケーキを魔法少女になるための対価(願い)とした。

では、このチーズケーキは何のmetaphorだろうか?
答えはおそらく「母親との架け橋となる道具(愛情)」だろう。
治療行為が母親との愛情を取り戻すことにならないとわかったからこそ、愛情を取り戻す道具として、チーズケーキを求めた。
だから、12話で母親との接点を絶つ魔女を拒絶した。
だから、13話の最後で(得られなかった)チーズ(=愛情)を求めた。

ただ、13話の死ぬ間際での邂逅にて、母親の求めになぎさは答えなかった(上記下線部)。
これは、なぎさは「愛情」が分からなかったゆえなのだろうか?
それともなぎさは、これは「愛情」が得られないと確信して呆然としたのだろうか?

おそらくこの部分をプレイすると、非常に不気味に感じられる人が多いと思う。
最も筋が通っている説はおそらく、「良くない心」を満たすために無言を貫いた、という説だろう。
だからこそ、最後にチーズ(愛情)に至る夢を見たのではないか、と思うのだがいかがだろうか。

ぜひプレイしてみて考えてみて欲しい。

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※書き入れる場所がなかったので書いておく。
6話の時点でチーズケーキが嫌いとなぎさが言っているのは、今の母親が嫌いであることを暗示していると考えられる。
13話にて、なぎさが魔法少女になって程なく死んだことが示されているが、これは魔法少女としてなぎさが求めるものがこの世にないから、だと考えられる(魔法少女としての力が弱いとか以前の問題)。


おわり。