本記事は、minoriの最新作『その日の獣には、』をプレイした感想です。
感想と言いながら、おそらく気になったところに思いっきり言及するだけのやつです。きっと(笑)

内容的にネタバレが入ります。
なので、ネタバレが嫌な人は回れ右を推奨します。

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その前にminori作品の前提について少し触れておきます。
なお、私の記憶に依存している内容も含まれているので、その点はご了承ください。

①minori作品のシナリオは短い?
minori作品のシナリオ量は2MBはないです。少し前のお話ですが1.5MB前後だと言及されていた時期があったと記憶しています。シナリオが長ければ長いほど良いものというわけではありません。無駄に長ければ締まりがなくなるだけです。一応言っておきますが、元々minori作品はミドルプライスに近い価格帯ですから、フルプライスでぼったくられているわけではないです(笑)

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②minori作品には周期性がある
私は勝手に「意欲作」と「安定作」って呼んでます。

「意欲作」は、少し挑戦している作品。人を選びうる作品群です。
「安定作」は、安定して強い作品。人気が高くなりやすい作品群です。

1作品ごとに意欲作と安定作をループしてます。最近でいうと『罪ノ光ランデヴー』は前者、『トリノライン』は後者です。
初めてminori作品をプレイする方には、「安定作」に該当する作品をオススメします。

今回の『その日の獣には、』は「意欲作」です。

③minoriの独特なエンジンについて
これは初めての人向けに書いておきます。
オートはAlt+A、スキップはAlt+KまたはEnter長押しです。
Ctrlスキップはききません。ずっとこのショートカットキーなので、私は慣れました。
他にもありますが、とりあえずこの2つだけ把握しとくと良いと思います。
なお、これらのスピードをconfigで調整すればかなりスムーズにプレイできます。













以上を踏まえて、『その日の獣には、』の感想を述べていきます。

推奨攻略順は、瑠奈→舞雪→祈莉の順番です。最後は固定ですが、この順番を推奨します。

総評として端的に述べるならば、
作品全体のレベルが高いがゆえに、描写不足が目立つ惜しい作品でした。


今回瑠奈ルートから入ったのですが、最初に引っかかったのが、付き合い始めて他のヒロインにも伝えた方が良いと言われてからの描写です。
通常、他のヒロインズに話してどうだったか、というお話に移行します。しかしこのルートでは、実際に付き合ったヒロインとの会話でその場面を振り返るだけで、具体的な他のヒロインとの会話描写がありませんでした。(※他ルートではこの描写はありました)
なので、話をゆっくり読んでた身としては、あれ?飛ばしたかな?と思いました。

さくさく読み進められる点で悪いことではないのですが、逆にここまで丁寧に描かれていたがゆえに描写不足とも感じられるものでした。
とはいえ、この作品は「劇本番」という山場があるので、そこにストレートにつながるんだろうな、と思ってプレイし続けました。


・・・・・・

さあ、クロガネとの関係性も決めて、本番。

→→→ 劇の本番の後になってる??? あっれぇ??

久々に肩すかしを食らいました。

・・・・・・

続いて舞雪ルートに進みました。
舞雪ルートでは、舞雪の一途なかわいらしさが良く出ていて、可愛いこと可愛いことこの上ない。
やはりCVくすはらゆい大正義っすね。
そして、劇本番を迎えるところでED。綺麗な1ルートだったと思います。


で、これを踏まえて、先の肩すかしを食らった内容について考察しました。
前提=「最終ルートである祈莉ルートで、劇の内容に触れていく構成である」
これを踏まえると、劇本番を他2ルートで描写しないのは全然ありですね。
ただ、劇本番を軽んじているような見せ方は良くなかったと感じました。
舞雪ルートのように劇本番をEDムービーで挟む方法をとった方が良かったのではないか、と思います。

ミクロ目線だとヒロインの心理描写、マクロ目線だと劇が軸になっている作品だと思います。
なので、ミクロの方に行き過ぎて、マクロの方が弱くなってしまったという印象です。

なお、ヒロインの心理描写が強すぎて、主人公の心理描写が弱くなっている、という欠点もあります。特に瑠奈ルートは主人公の記憶が変化するお話だったので、その辺が淡白になるのは設定上仕方がないことかな、という見解です。




さて、期待の劇描写が入る祈莉ルートに行きました。
クロガネの提示した方向ではない方向に行ったのは、結構意外でしたね。それでハッピーエンドに落とし込んだのは良かったと思います。

ただ、問題は劇の描写。
(共通ルートで触れているから)重複するところを省く見せ方を選んでいたんですね。
重複を省くというよりは、祈莉を強調しすぎた見せ方かもしれません(←全編見直したら加筆修正すると思います)。
この選択は好ましくないと考えていて、
①2ルートやったら、そんなのは曖昧になって、忘れてる可能性がある。
②強いシーンが強くなくなる可能性がある。

要は、読者からすると緩急がなくなるんですね。
当たり前ですが、強いものを強いと思わせるには、弱い対象が必要なんです。
濃い味付けのものを味わって欲しいなら、組み合わせは薄いものを用意すべきなのです。

今回、劇の濃いシーンだけが提示されちゃったんですね。
そうなると、読み終わったときに「あれ?これで終わり?なんか盛り上がったけど、盛り上がりに欠けたなぁ」って感想になるんじゃないか、と思います。私はそうなりました。

なので、私としてはそこまでに触れた劇の台本描写を使いながら、劇の前半をもっと描写すべきだったと思います。

なぜそういう描写になってしまったのか、という疑問があると思います。私の見解ですが、この作品まじでテンポが良いんですね。オートで読んでたらいつの間にか2時間経過していたとかザラでした。そのくらい話の流れがすすすーっと入ってくる流れなんです。だから、テンポを良くするがゆえに蛇足的なところを削りすぎたのではないか、と思います。アップテンポで走り切りすぎた。だからああいう描写になったのかなぁ、と考察します。無駄を残した方が良かったのではないか、と思うんです。




結構細かい指摘をしてきましたが、このような細かいところが気になるのも、細かいところまでフォローできている作品だからなんですよね。

たとえば、毎度おなじみになっている立ち絵の表情変化や口パク。minori独特の演出ゆえにできていることですが、演出の細やかさは群を抜いてminori作品は強いです。
シナリオ面でも本作ではヒロインの心理描写をひとつひとつ丁寧に描かれていました。
ヒロインの心理描写における地の文で、ヒロインのボイスが入っているのはまじ最高です。
ヒロインのデートシーンはCGと演出でヒロインの全身を映してくれて、ヒロインの魅力を魅せてくれてます。
音楽もその場に合うBGMが使われていたと思います。曲数の制限ゆえに使い回しが目立つ作品もありますが、そういう違和感を一切感じさせずに、自然に入ってくる感じが好きです(だから、minori作品はいつも豪華版でサントラも一緒に買ってます)。

本当に細やかだからこそ、荒さが目立ってしまった、という印象です。
でも、作品としての完成度は高いと思います。

元々ポンコツの機械だったら、少しくらい故障しても気になりません。
でも、すごく有能でしっかり仕事してくれた機械が、ちょっと故障すると、すごく気になります。
そういうイメージです。だから、すごく勿体ないです。

だから、(予算とかを考慮すると大変だとは思いますが)丁寧さをもっと大事にして、その強みを生かし続けて次の作品を出してくれることを心から期待してます。