本記事は、2019年6月末に発売された『黄昏のフォルクローレ』の感想記事です。
まずは、ヒロインの乙部すぴか。
食が細い代わりに、主人公とのセックスでエネルギーを得ている少女。
サブキャラの麦。
同じくサブキャラの月子。
以前Twitterでこのようなことを述べました。
これは抜きゲーに限ったことではなく、あらゆるエロゲに言えることだと思います。
ネタバレありの記事ですが、未プレイの方でも本作品に興味を持てるような内容になっていると思いますので、気兼ねなく読み進めてみてください。
特にネタバレに関連するシナリオ内容関連については、「主人公との距離感と、キャラクターボイス(以下CV)」というテーマでお話ししていこうと思います。
シナリオの構成は、ほぼ一本道(選択肢によるbad endが一つだけある)。
低価格帯の作品として、ボリュームは十分だと思います。
シナリオ内容については、「主人公との距離感と、キャラクターボイス」というテーマに設定したので、メインキャラ3人について触れながら話を進めていきます。
まずは、ヒロインの乙部すぴか。
主人公との関係性は、「お互いのことを分かっているのに、身体だけがつながっている関係」。
食が細い代わりに、主人公とのセックスでエネルギーを得ている少女。
主人公はすぴかの専属の従者をしています。
従者になってから5年ほど経っており、お互いのことを知り尽くしている仲です。
すぴかと主人公の会話における歯車のかみ合い方はまさにそういう関係を象徴していると思います。
すぴかのCVは遥そらさん。
遥そらさんで代表作を挙げるなら『ウィッチズガーデン』の涼乃や『千の刃濤、桃花染の皇姫』の朱璃あたりでしょう。
遥そらさんの強い演技と言えば、キャラクターのしっかりした芯を出す演技ですね。
すぴかもお嬢様らしく「自分の芯」を持っていて、それゆえにシナリオ終盤の展開になっちゃうよなぁってなりますね。そこがすぴからしく愛らしいと思うところですけどね。
サブキャラの麦。
主人公と麦は、気兼ねなく話せる「家族」のような間柄です。
主人公の同僚(後輩)であり、すぴかに信頼された女給です。
麦のCVは、小鳥居夕花さん。
小鳥居さんの強い演技は、純真無垢さや元気っ子の演技ですね。
前者は『Re:birth colony -Lost azurite-』のアズライトや『PRIMAL HEARTS 2』のアリスティア、後者は『見上げてごらん、夜空の星を』のころなや『あいりすミスティリア!』のラディスが代表例でしょう。
麦は、非常に気の強い人間です。
どんな状況でも日常のごとく振る舞える、そんな強さを持ち合わせる人間です。
すぴかが陰ならば、麦が陽であり、それゆえにすぴかの隣にいることができる女性は麦なのでしょう。
そんな彼女でも、強さの限界を迎える場面があるということ。そして再び気丈に振る舞える強さがあること。こういった彼女の魅力が中終盤にかけて出ていました。
影を持ちつつも明るく振る舞う麦は、先に挙げた特徴をミックスさせた小鳥居さんの強みが出ていると思います。同じくサブキャラの月子。
主人公との関係性は「友人」ですね。
月子のCVは花園めいさん。
代表作は、『時を紡ぐ約束』の穂乃香や『BALDR BRINGER』の十彩ですね。
花園めいさんの強い演技といえば、生真面目系の気を張った感じの演技です。
しかしながら、HPの紹介文では、影の薄いキャラというイメージが強く、なぜ花園さんを月子役に起用したのか?という問いが製品版をやる前の第一印象でした。
月子は当初すぴかの前に立ちはだかりますが、その後「友人」として、主人公やすぴかと接するキャラとなります。主人公やすぴかの歪みつつもまっすぐ生きる様子に対して、自身の正義に従い、時にはアドバイスし、時には呆れる。作者に近いメタ的な視点で言うなら、主人公やすぴかに共感できない部分が出てきても、その時に代わりにプレイヤー目線を担ってくれるのが月子だと思います(←それが「友人」ポジションのサブキャラが有用とされる所以だと思います)。
本編クリア後に出てくる「黄昏逸話」でも月子らしさがでていました。本編と合わせて鑑みると、これは確かにCV花園めいであるべき、と納得しました。
以上のように、各CVとキャラ、そしてキャラ同士の距離感の歯車が上手く噛み合ってできていました。
キャラ絵や背景のかみ合い方も絶妙でした。キャラのシュッとした絵柄も、明治維新後がイメージされた背景も、上手くマッチしていました。
音楽(BGMやOP・ED)も作品の雰囲気を上手く作っていたと思います。作品の落ち着いた空気感や祝い子関連の妖しさを上手く醸し出していたと思います。
以前Twitterでこのようなことを述べました。
絵だけならCG集、それに声を足すだけなら音声作品的なやつで十分じゃん。エロゲのエロってなんやねん?ってところを理解していない抜きゲーとは決してわかり合えないと思いました。
— クルクル丸 (@skskidays) August 17, 2019
これは抜きゲーに限ったことではなく、あらゆるエロゲに言えることだと思います。
(今回エッチシーンについては割愛しましたが、非常にエロゲらしいエッチシーンの数々でした)
『黄昏のフォルクローレ』は、本当に各パートの咬み合わせが良く、1+1が2じゃなくて10にも20にもなって魅せてくれる。それが本来エロゲに求めるべきものであり、高いお金を出して価値のあるものだと思います。そして、その価値が間違いなくあった、と言い切れる作品、それが『黄昏のフォルクローレ』でした。